2011/01/04号

ウイグルとの出会い~管理人編~

 

 

▲当時建設真っ只中だったチョンバザール(ウルムチ)
 
 
  私が初めてシルクロードに足を踏み入れたのは2003年の偶然にも自分の誕生日。
  それだけでも何かの「縁」が始まっていたように思います。
 
 
  列車に乗ってカシュガル駅に着き、改札を出たとたん、すでに私はタクシーの運転手に囲まれていた。みんな一斉に話しかけてくる。何も決めていなかった私は、ひとまず街の中心にあるエイティガール寺院へ行ってみようと思った。
 
 
    「じゃあエイティガール寺院まで」
    「よし、そこまでなら100元だ」
 
     ・・・。
 
 
「じゃあお願い」などと言うはずもなかった。そんなはずがない。断ったらすぐに「50元」になった。それでも高すぎる。列車で知り合った人には20元~25元が相場だろうと言われていた。私は旅行者のプライドをかけて断った。しかし誰の答えも「50元」。どうも既に協定が結ばれている。
 
 
 「メーター使うか30元じゃないと乗らない。ダメと言うならみんな嘘つきだから街まで歩いてく。」
 
 
 最後のかけだった。
 
 
   「あははは。50元以下で走るタクシーはいないよ。
    歩いていけばいい。こんなに暑いのに辿り着けるかな(笑)」
 
 
 私はもう口を聞かなかった。そして歩き出した。後ろからまだ「Taxi?」と誰かがついてきていたけれど。  
 しかし暑い。少し進むと背中の荷物が重くてクラクラする。意地をはっている場合じゃなかったのかもしれない、と弱気になった。
 
 
   「Taxi?」
 
 
 まだ誰かがついてくる。振り向くと若いウイグル人男性の運転手だった。今客を降ろしたばかりのようで徐行運転しながら私に近寄ってくる。私は軽く睨み返した。でもその運転手は「タクシー?どこ行くの?」と話しかけてくる。
 
 
   「タクシーはいらない!ここの運転手は悪い人ばかりだから歩いて街まで行くの。」
   「街まで歩いていくなんて無理だよ、倒れてしまうよ!乗って。」
   「50元タクシーには私は乗りたくないの」
 
 
 また、強気な発言をしてしまった。
 
 
   「いくらならいいの?」
   「(少し考えて)10元!」
 
  
 中国では希望価格よりずっと下から交渉するのが習慣だ。
 
   
   「いいよ。乗って。」
 
  
 あっさりOKが出てしまった。え?10元。でも、どうせ嘘に決まっている。乗ったら最後。でも、もう暑くて倒れそう。
 
   
   「本当に10元?」「そう10元」
 
  
 あれこれ考えたが、私はひとまず彼のタクシーに乗ることにした。 そしてガイドブックを見て「じゃあ、○○賓館までお願い」とだけ伝えた。
 
 素朴な笑顔の彼がやたらと話しかけてくる。
 
    
   「どこの国から来たの?」
   「なんで漢語が分かるの?」
   「カシュガルにはどれくらい滞在するの?」
 
  
 日本から来たというと「私には日本人の友達がいます。」と言って彼はその人の名刺を見せてくれた。名刺には直筆でいろいろな情報が書き込まれていて、本当に友達だと分かった。しかし半信半疑な私は会話には集中できず、そのまま○○賓館へ到着した。
 
 先手を打って「はい、10元」と差し出すと、拍子抜けするくらい彼はあっさり受け取った。
  
 なんだ。適正価格は10元だったのか・・・。
  
 そう思うとまた腹が立ちながらも、目の前の親切な彼と感謝の気持ちを込めて握手をした。
    
 
   「明日はどこへ行くの?」
   「まだ決めてないよ。」
   「では案内します。朝10時にまたここへ来ます。」
 
 
 そう言うと彼の車は走っていった。
 
 

▲当時の日曜バザールの様子(カシュガル)

 

 翌日、彼は本当に来た。そして私は昨日のお礼にと思い、彼のタクシーを利用した。
 その翌日もまた彼が来た。今度は友人を紹介してくれた。お勧めのレストランへも連れて行ってくれた。感謝の気持ちで私は、日本の海の話や故郷の話、流行っているものを紹介して会話を楽しんだ。
 今思っても、とても優しい時間だった。 
 
 後日、観光に飽きた私はカシュガル駅で見た大自然を堪能しようと思い立った。その日カシュガルで初めてタクシーを拾い、メーターを使って行った。    
 そして、知った。    
 初乗りは5元で、市内から乗ると、カシュガル駅よりずっと手前でメーターは10元を超えた。    
 
 あの日を思い出す。
 彼は灼熱の中を歩く外国人を放っておけなかったんだろう。言葉では表現できないほど、優しさが身にしみた。 
 カシュガルを離れる最後の日、彼とまた会い、こんな話をしてくれた。
 
 
   「毎年多くの外国人旅行者が来るけれど、僕は英語ができず、漢語もあまり上手ではないので、コミュニケーションがとれませんでした。でもあなたは違う。漢語でいろいろな話を聞かせてくれて、国際交流ができたよ。ありがとう。」
 
 
 外国語を学ぶ意義を感じられた瞬間。そしてウイグルとの縁を強く感じた瞬間。
 今でもこの彼は国境を越えた私の良き友人です。ゆっくりではありますが、彼を含め、旅の間何度も温かい気持ちにしてくれたウイグルの方々へ「国際交流」を通じてお返していきたいな、と思っています。

  

 

 

 

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